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「考える技術・書く技術」,バーバラ・ミント (Barbara Minto; Logic in Writing, Thinking and Problem Solving) |
まずは,分厚さが違う!(いきなりそれですか…)通勤電車でつり革片手に読むのはためらってしまうような厚さ&重さ。書店で奥の方にひっそりと置いてあったのですが,その厚さと,日本のビジネス書のような読者ウケしそうなわかりやすいだけの本ではなさそうなところに惹かれて買いました。でも,通勤電車では重かった…。
内容は,
・わかりやすい文書を書くためには,明快な論理構成に基づかなければならない
・明快な論理構成はピラミッド構造になっていなければならない。The Minto Pyramid Principle.
著者,Barbara MintoさんがMcKinseyに在籍中に発見した法則だそうです。マッキンゼーというと,MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)とかで聞いたことがくらいしか知らないけど,「なんか,マーケティング関係ですごそうなところ」と思っていました。この本でもMECEは出てきますが,話のメインは論理の組み立て方です。一つの結論を導き出すために,どのような思考をすれば良いのか,そしてそれを人に伝えるにはどのような構造の文書を書いたらいいのか,の基本的な考え方が分かります。様々な示唆を含んでいるのですが,その中でも,
・章や節の題,箇条書きは,同じカテゴリに属するアイテムでグルーピングされ,かつMECEでなければならない。
・演繹法と帰納法の使い分け
などは非常に参考になりました。
振り返って,自分の文書を見てみると,特に理由もなく
1はじめに
2背景
3目的・・
とあまり考えないで,適当に順番に数字を振っていただけの文書が多いです。それに,演繹と帰納も意識しないで書きたいように書いていました。訳本ということもあり,この本自体が読むのが結構大変ですが,小手先の文章表現を書いたハウツー本ではなく,よい思考方法やよい文書作成のための,基本的な考え方がわかる素晴らしい本でした。
2003/05/14 @ 東海道線
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「ランチタイムの経済学」,「フェアプレイの経済学」,スティーブン・ランズバーグ (Steven E. Landsburg) |
この本を読もうと思ったキッカケは、竹中平蔵の「経済ってそういうことだったのか会議」で、紹介していたからで、同じ著者の「ランチタイムの経済学」も併せて読みました。
内容は、一読すると、「あ、なるほど。そうじゃなくちゃいけないよな」と思わせるものなんだけど、注意して良く読むと「待てよ?本当にそう言い切れるか?」と思う意見が多いです。
タイトルの通り、経済における「フェア」について書かれていて、主な主張では、
などです。確かに、そういう側面もあるとは思うのですが、現在の社会システムに組み込まれているこれらの制度の効用には触れずに完全に「悪」と決めつけていいものかな?という気がしました。確かに、リスクにチャレンジして成功した(=富を手に入れた)人達に対して、「富の再配分」の名のものに、高い累進課税を課すことは、チャレンジスピリッツをある程度スポイルしてしまっているのは本当だと思うんだけど、かといって最低の所得額の人から年収で億を超える人まで同率の税額でいいか、というと違うと思うなぁ…。やはり、ある程度の応能負担は必要だと思います。
そもそも、「フェアであること」だけが絶対の正義であるかというと、場合によっては「フェアであること」より大事な価値観もたくさんあるかと思いました。
その他では、「人間はインセンティブによって動くもの」という経済学の基本原理が、おもしろい例を使って説明してあり、ここは素直に面白かったです。リスクを扱った本には必ず登場する、モラルハザードや逆選択について、例えば、
シートベルト着用の義務化は、ドライバーの死亡者数は減るが、事故率は上昇し、歩行者の死亡者数が上昇する。安全運転をするインセンティブが下がるからであり、これを解決するには、ハンドルに、ドライバーの胸を向いた槍を置いておけばよい。などは笑えました。確かに、自分の胸先に槍が向いていたら、こわくてこわくて、20km/hくらいしか出せないし、車間なんて200mくらいとるかも。
全体として、正しいこともあるし退屈な日本の経済本に比べたら圧倒的におもしろいけど、極端に1 or 0で決めるのは危険かな?、と思いました。
2003/5/20 @ 藤沢駅Starbucks Coffee